40代からの方向転換2

2020年7月24日

<勉強はやる気よりも“枠組み作り”>

「中学生ぐらいの学力しかなかった私がどのようにして難関大学院へ合格したか」

それは、心理的枠組みを利用したからである。   少し、その点について解説をしてみた。

少し、その点について解説をしてみた。

心理的枠について  自由や開放が必ずしもいいとは限らない

大学で単位を落としてしまい、このままだと卒業が危ぶまれると深刻な顔をして相談に来る学生がいる。話を聞くと高校までは、成績もよく順調に来ていたのに、大学に入ったら、いつの間にか単位を落としてしまったという。その上このような自堕落な人間になってしまったと自分を責めているのである。責めるから、落ち込み、元気をなくして、ますます勉強をする気になれない、そしてまた嘆くという悪循環となっている。

対応:精神論はダメ! 心理教育で、自責感を払しょくさせる。

こういう時に、親や教師などが精神論で根性叩き直すといったことがよく行われるが、精神論では解決しない場合がほとんどである。こう言った場合、具体的処方箋を示せる行動療法的対応を私は選択する。

まず、私は心理的枠組みという話をして(これを心理教育と言う)、自責感からひとまず、解放させる。

心理教育:「あなたが単位をとれなくなったのは、堕落したからではありません。枠組みを失ったからです。なので私と一緒に枠組みを作りましょう」と。ここで前回の記事にも記した様に、小学生のほとんどが、学校へ通うのは、やる気があるからとか勤勉だからではなく、小学校へ行かなくてはいけないという社会のルールみたいなものがあり、それが心理的枠組みとなっているからであるといったような話をする。事実、高校までは、学校の時間割がしっかりと提示されて、理由もなく学校を休むと親や先生が黙っていないし、朝だって遅刻しないように親が起こしてくれたりする。これをを枠というのだと説明する。大学にきて下宿すると朝起きようが起きまいが、自分の裁量であり、授業に出ようが出まいが、先生から電話があるわけではない。こうしてそれまでと違って、枠組みが弱くなるのである。

お決まりの留年パターン

私のところに来る留年学生の多くは、深刻な状況があって、単位を落とすというより、初めは授業には出るが、アパートに帰ってきて、手を洗い、とりあえず、スマフォチェック、その後課題があるので勉強をしようと思い、課題本を広げて読もうとする。しかしすぐに、ゴロンとしたり、そのまま寝たり、ちょっと小腹がすいたと、冷蔵庫のところへ行き何かつまんだり、またゴロンと寝そべりスマフォいじり、そのまま眠ってしまうことがある。こんな一日を過ごし、また明日やろうと先延ばしにする。そうして課題期限前になるともう今更無理だとあきらめる。また、次のセメスターに回す。こうして留年するというパターンだ。 このようにして頑張ってきたまじめな学生は、徐々に勤勉を奪われていく。

行動療法的対応

まず、現状分析をしっかりとする;どのように問題となっているか。

おおよその生活リズムをつかむ。例;朝が起きられない。➡つい遅くまでスマフォ動画を見てしまう。気が付いたら授業に間に合わない。出だしを失敗すると午後の授業も、なんとなく出ない。夜になると落ち込む。➡それを繰り返し、単位を落としてしまう。

睡眠リズムを整える

【眠りのことは眠りに任せる】➡認知行動療法の睡眠障害の治療の原則は、「眠ることはコントロールが難しい、しかし起きていることは頑張ればできる」である。➡日中に眠らない工夫をしていくことで夜に自然に眠くなるようにしていく(スマフォいじりも眠りに負ける)。

自律神経のうち交感神経は昼の活動的な神経で夜の神経と言われる副交感神経はリラックスの神経。眠ろう眠ろうと一生懸命努力してしまうと交感神経が活発になり、眠れなくなる。眠りはリラックスした結果であるので、眠りは眠りに任せ、力を抜くのである。

次に勉強を邪魔しているものを禁止する「スマフォを見るな!」、「ごろんと眠るな!」、「何かを食べるな!」このようなこと言っても、自分のアパートでは難しい。知覚心理学者のジェームズ・ギブソンの唱えた概念でアフォーダンスというものがある。それによると、この学生の場合は、住居環境が、スマフォをいじるようにアフォードするし、ベッドや引きっぱなしの布団はゴロンと寝るようにアフォードする。椅子は座ることを学生にアフォードするといった具合だ。

なので上記のような「~するな!」というのは難しい。行動療法の基本は問題改善や修正するための行動は引き算ではなく足し算でという原則がある。「~するな」は引き算である。以上のことを考慮すると、これら勉強の邪魔をするものを対処するには、今までとは違う行動を足し算するのが良い。

環境調整は足し算で

授業終了後アパートへ帰るのではなく、帰っても上記のように勉強を邪魔される。そのまま空き教室で勉強するか図書館で勉強することを提案する➡ここでは、スマフォは家みたいにはいじれない。ごろんと眠れない。ものを食べにやたら席を外せない。

つまりここでは勉強が促進されるのだ。図書館が学生に勉強することをアフォードするのである。こんなことぐらい誰でも工夫すると思うかもしれないが、こうしただれでもするような工夫に、心理学的意味付けをすることで動機付けされ、実践される確率が高まるのである。   ぜひ試していただきたい。

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