鬱にならない生き方

2020年7月24日

文脈を変えるという"うつ病予防"

人を殴る行為 ➡ これはいけないことだ。どんな場合も人を殴る行為は許されない。

果たしてそうか?

確かに、電車の中の通勤するサラリーマン同士という文脈の中で、殴り合いを始めたら、これは、いけない。他の乗客にもこれほど迷惑の話はない。人を殴る行為は許されない。

しかし、こういう文脈ではどうか?

ここはラスベガスにある豪華大型ホテルだ。そこに特別に設置されたボクシングタイトルマッチのリングの上、チャンピョンと挑戦者という文脈ならば、どうだろうか?この場合の人を殴る行為は、許されないどころか、絶賛される。同じ行為であっても文脈が変われば、まったく意味が変わってしまうという典型例である。

ここまでわかりやすい文脈の変化でなくても、ちょっとした文脈の変化で、人の感情は大きく変わるのだ。

例えば、私は現在、公認心理師、臨床心理士養成大学院で教えているが、希望をもって入学したが、失望してしまったという学生に出会った。彼は社会人入学であるが、社会の殺伐とした人間関係に嫌気をさし、心の専門家を目指して入学してきた.

彼は成果主義のサラリーマン世界ではなく、心の専門家同士仲良く、癒されながら勉強ができる環境を期待してやってきたのである。彼が思うにおそらく教員たちは臨床心理学の専門家であり、ほとんどが人の心を癒すカウンセラーや精神科医だからきっと楽しい院生生活が待っていると期待をしていたのだ。ところが彼の希望あふれる院生生活は数週間で砕かれた。

そうして私のところへ相談にやってきたのだ。彼曰く、こころの専門家であるはずの、先生方から、人格否定されたというのだ。これでは、何のためにここへ入ったのかわからない、と泣きながら訴える。

文脈を変えることを提案する

彼はある意味、弱肉強食の厳しい競争社会から、心温まるホンワカした癒しの世界へと理想郷を求めて院に入ってきたのである。そこに先生方の厳しい叱咤激励が、彼は混乱をする。「こんなはずじゃなかったと、臨床心理学の先生がなんで人を傷つけるのか」と

文脈違いだ!と忠告する。

楽天ブックス

認知を変えて文脈を切り替えろ!

理想郷に入ったという文脈➡ここは最もハードなこころの専門家を育てる訓練機関だと思え➡文脈変更

こころの専門家の臨床現場には、死と隣り合わせのクライエントも来る。次の面接まで生きているだろうかと思われる人もいる。時にはそうした人に寄り添わなければならない精神的に最もタフな仕事だ。そういう状況に耐えられる人を作り出すのが、この院だと。あなたはリングの上で殴られたと苦情を言っているようなものだ。

彼はそこから変わり始める。タフな訓練機関という文脈にすると何故かそれまでの厳しい教員の指導にも耐えられるようになった。鬱寸前だった彼は、何かを得ようという姿勢になった。こうした文脈の切り替えが、鬱になることを予防することがある。しかも、これは回りが鬱の人に気を使い環境調整するといった予防策と違い、本人が人生モードを切り替えることでの予防策だ。こうなると、環境がどうであれ、自分を変えることで対処できる優れものの予防策だ。

これを自分に当てはめてみよう!

例えば、過酷なサラリーマン生活を送っている人は、サバイバルゲームという文脈に切り替える。ここは、ユートピアではなく、毒蛇も猛獣もいるジャングルだ。そこをいろいろなアイテムを獲得しながら、生き延び、そして栄光のゴールへと進むサバイバルゲーム!

上司や同僚に自分に優しく接してくれる人をイメージするのではなく、しっかりと性質や性格を見極めて、それぞれの性格に基づいて、トリセツを作り、うまく対応していくゲームだ。

こういう側面を少し取り入れていくだけで、失望を抑えられる。置かれた状況の心理的文脈を変えるのだ。

仕事仲間に不信感を持てということではない。

お門違いな期待はするな!

共に戦う仲間を作りながら、時には扱いにくい毒蛇や猛獣の人ともうまく協力してもらい、栄光のゴールへと突き進むということ。いつも高圧的な態度をとる上司もいちいち理由を聞いたり、疑問を呈したりする部下も、そうした人の性質を見極めてトリセツを作り、扱い方さえ気を付ければ、被害は最小に抑えられる。

私もそうであったが、鬱になる人は、「自分に能力がないから上司が怒る」「自分がダメだから、部下に馬鹿にされる」と自己評価を下げてしまう人がかなりいる。自分がダメだからではなく、相手がそう出るのは、相手の性質の問題だ。相手の問題なのに落ち込むことはない。毒蛇にかわいい子犬になることを期待するのは間違いだ。お門違いな期待をするから、失望するのである

結論

上司や部下の性質を分析して、トリセツを作ろう!

相手に勝手に期待して、期待外れになって、自分の能力のせいにして鬱になるのはもったいない。

扱い方を失敗して噛みつかれても、自分の能力のせいではない。

取り扱いを見直して、うまく扱っていけばいいことなのだ。

楽天ブックス