失敗しない人生 つまらないことで人生を台無しにしないための方法
衝動という人生の罠
人生を失敗へと導いてしまうものとして私が一番に挙げたいのが、衝動だ。衝動は人から冷静さを奪い、判断を誤らせる。典型的なのが、犯罪だ。米国では多くの殺傷事件が計画的ではなく、衝動的犯行だということが分かっている。
そんな凶悪事件でなくても、多くの人が衝動的に行動をして、失敗を経験しているのではないだろうか。
たとえば、平和で穏やかな家庭生活を望んでいるにもかかわらず、売り言葉に買い言葉でつい妻や子どもに衝動的に暴言を吐いてしまったことはないだろうか。自分の願っていることとは裏腹の言動を衝動は引き出してしまうのである。

このような衝動に起因する失敗を防ぐ方法を解説してみたい。
〇罠にかからない方法
頭に来たら、リフレクション!
これが最高の怒りの衝動の抑え方。
怒りだけではなく、他の衝動にもリフレクションがいい。
リフレクションとは、臨床心理学では「繰り返し」という意味になる。クライエントの話を整理して要約し、わかりやすい形にして返すことをいう。これを自分の体に入ってきた衝動に対して行うのである。これが一番、効果がある。
以下に実施法を示す。
衝動に気づくことを意識すること。
何らかの刺激があると、身体のどこかに勝手に入ってくるのが衝動である。そして例えば「~食べたい。~したい」といったほぼ反射的な行動を引き出してしまう。
衝動性に気づく
この衝動性に気づくことがまず大切である。
しかしこれが意外と難しい。たいていは気づく前に、行動化といってのちに問題となる行動を引き起こしてしまう。そして「またやってしまった」といった後悔を人は、繰り返すのである。
この衝動に気づくためにはマインドフルネスなどの訓練が必要であるが、まずは常に怒りの衝動や食べたいなどの欲求衝動に常に気づきたいと意識することである。
その衝動を言語化する
そして何となく衝動があるなと気づけたら、それを言語化してみること。例えば「今、テーブルにあるケーキを見て、食べたいという衝動が確かに自分の中にある」と気づく。
あるいは「今、あの男の言動に対して、自分がなめられたと思って、怒りを感じた(ここまで認知と気分)➡言い返したい」という衝動に気づくことができればまずは上出来だ。
このように衝動を言語化してみることが大切であるが、うまく言葉にできない場合もある。その場合は衝動がそこにあることに気づくことだけでも良い。
言語化できた言葉をリフレクション(頭の中で繰り返す)
次に衝動に気づけるようになったら、言語化をする。
〇体に感じる衝動性に気づき➡言語化「~が言いたい。~したい。~食べたい。」➡リフレクション「~が言いたい衝動が入ったな。~したいという衝動が今入ったな。~食べたいという衝動が入ったな」。
このように「~という衝動が入ったな」と心の中で言語化し、それをつぶやいてみることがリフレクションだ!
衝動を客体化する
さらに、もっとこの方法を有効にするために、身体に侵入してきた衝動に名前を付けてみることである。できれば滑稽な、あるいは衝動を行動化させないような名前がいい。
例えば、「~が食べたい」という衝動に気づいたら、「食いしん坊が入ったな」とか、ダイエットしたい人なら、「ブーちゃんが入ったな」でもいい。このように衝動に滑稽な名前や屈辱的な名前をつけることも効果がある。これを「衝動の客体化」という。
電車の中で怒りの衝動が入り、怒鳴ったり、突き飛ばしたりてしまったら犯罪である。そうした行動化を防ぐためにも、怒りの衝動に例えば、自分の人生を破壊するイメージを持たせる「滅亡衝動」とか、あるいは「お先真っ暗衝動」、「家族破滅衝動」といった名前を付ける。
そして「~衝動が入ったな」と心でつぶやいてみる。つまりここで衝動を行動化したら、その結果が最悪な状態になることが予想できるような名前をつけてみるということである。このようにその名前がネガティブな結果をイメージさせるようなものが効果的である。
私のところに来る相談者の何人かに勧めた結果、かなりの人に効果があった。中には、強迫観念に「いたずら小僧」という名前を付けて、強迫観念と距離を取ることができて、強迫症が改善した小学生の例もあった。
意志力がつく
まずは自分の衝動にいち早く気づき、衝動に任せて行動した時の結果に思いをはせる。そして意識的に衝動的行動をしないという選択をする。これが意志力である。
これを取り入れると意志力を発達させていくことができる。これは多くの研究で示されている。逆に言えば、衝動任せに行動していくと意志力は衰えて、気分次第の人生、風まかせの人生となってしまう。
そうならないためにも是非、自分の衝動に気づき、それを言語化して、名前を付けて、リフレクションをする。再度その衝動が起きた時にはその衝動の名前を心で「~はいったな」とつぶやく。
根拠
この手法は認知行動療法の第三世代と言われているアクセプタンス&コミットメントセラピーという心理療法の中の脱フュージョンワークというプロセスでよく使われる技法である。
不安や抑うつをもたらせる侵入認知(自動思考)に対して「~と思った、~と考えた」を心の中で付け加えるという手法である。これを加えることによって認知との距離ができ、意志力がうまく使えるようになるというものである。
この技法は、私も臨床現場で不安症やうつ病の人に良く使う。そしてその有効性を実感しているところである。
最後にまとめ
〇体に感じる衝動性に気づく➡言語化(衝動を明確にする)➡客体化(名づける)➡リフレクション「~が言いたい。~したい。~食べたい。」
ぜひ皆さんも自分自身に活用していただきたい。
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