意識と無意識の鬩ぎ合い

2020年11月13日

知覚・認知心理学からの解釈

私たちは、例えば試験が近く勉強しなければならない状況であっても、意図通りにすんなりと勉強できるとは限らない。いろいろなことが頭に浮かんで勉強どころではなくなることを多くの人が経験していると思います。

これはいったいどう言うことなんでしょうか?

知覚認知心理学などを通して解説してみたいと思います。

認知心理学の分野にストループ効果というものかまあります。

例えば次の字の色を答えてください。

赤    

青   

 どうでしたか、色を読む課題は少し戸惑ったのではないでしょうか。

これをストループ効果と言って文字の色を読むことに文字の意味が邪魔をした結果なんです。つまり意識的には色を答えようと思っても無意識に文字の意味が干渉してくるのてす。

この無意識の干渉はこれだけではありません。日常生活の至るところで我々の意図した行動に干渉し、邪魔をしてきます。

最初の例もそうですが、やらなければならないことが目の前にあったとしても、意図したこととは無関係に無意識の世界から時には洪水のように干渉軍がやって来ます。そして時には完全に心や頭を占拠してしまうのです。

“あの事が気になる。”   “あれってどう言う意味なんだろう?私は嫌われてる。” などなど今、考える必要なんてないと意識では分かっていても、無意識の干渉軍に攻められても “もう日は無理” と白旗を挙げるしかないこともけっこうあるはずです。

実はうつ状態の人がこの状態です。臨床現場で抑うつや不安症の人に認知行動療法を施行しているとこのことがよくわかります。

私自身も鬱の時はそうでした。自分で意識的に認知の再体制化(状況に対するネガティブな考えやイメージをポジティブなものに変える)などしても洪水のように無意識のネガティブ軍団が次々のやってくるのです。

こうなるともはや降伏せざるを得ないです。そのうち、防衛反応なのか感覚麻痺が起こって何も感じなくなります。しかしこんな状態でも苦痛の感覚だけはわかるのです。これがまた辛くて、生きていたくなくなるのです。

フロイトによると意識よりはるかに無意識の領域が大きいといいます。これはよく氷山に例えられます。

すなわち意識は海面から出ている部分で海の中に隠れている部分がその何倍にもなる無意識ということです。これでは意識にとって多勢に無勢です。

勝負になれば、かなうわけありません。

しかし多くの心理療法家がこの無意識軍団からの攻撃に対処すべく様々な方略を編み出しました。

その一つがマインドフルネスエクササイズです。これは意識力を直接鍛えるものです。

そうなれば無意識からの干渉にも負けず、今やるべきことに集中でき、無駄なエネルギーを使わずにすみます。

こんなふうに書くと無意識はまるで悪者ですが、もちろん良い部分もたくさんあります。

例えば突然ひらめくアイデアなどはその良い例と言えましょう。

自分の人生にとって効果のあること、やりたい何かに向かって意識してるとこういう無意識からのプレゼントを受け取ることができるのです。

ところでこの無意識システムはどのように作られたのでしょうか?

無意識に関して、まるで無限に広がる世界のように語る人たちがいますが、私は少し違います。

無意識はまさに記憶の中のシステムであり、縁(きっかけとなる事象)によって意識に呼び覚まされる場合もあれば、意識できずに行動として作用する場合とがあり、この記憶システムをたよりに人は人生を豊かに生きることができるのです。

このシステムは、生きてきたなかで得た様々な経験が顕在的、潜在的に記憶に蓄積され続けた過程で作られていて、生きている限り広がり続けるのです。

エピソード記憶、手続き的記憶など記憶には様々なものがありますが、意識できない部分で行動に作用するものを我々は無意識と呼んでいることが多いということです。

このシステムは生存本能とその上に成り立つ学習心理学でいう学習に近い概念と思われます。

直接体験した学習や間接的なモデリング学習での顕在的、潜在的な知識の集合体がシステムとして我々に働きかけ作用するであり、何かの縁(きっかけ)によって活性化して我々に作用するものと思われます。

無意識下にあるポジティブなものが活性化すれば良いが、ネガティブなものが活性化すると気分が悪化するのだと思います。

心理療法はある意味、ネガティブなものを不活化させ、ポジティブなものを活性化させるための手段の一つと考えてもよいかもしれませんね。